Photos & Text by colorsmagyoge.

 

世界最大級の波情報サイトSurfline主催のWave Of The Winterで日本人初の世界一のパイプライナーに輝いた松岡慧斗と、2020年東京オリンピックに向けてISAではKelly Slaterを倒して2年連続4位入賞を果たすなど大活躍中の村上舜といったMAD DAWGのメンバーたちと、それにフックされたハワイ育ちの脇田泰地が顔を揃え、10/25(金)夜中に湘南を出発。

今回の目的はただひとつ。

台風21号崩れの温帯低気圧からのパワフルなスウェルに反応する未知なるブレイクを開拓することであった。

その目的地は、遡ることおよそ一ヶ月前、日本を代表するウェイブハンター松岡慧斗が、例のごとくGoogle Mapを眺めながら遥か遠くのとあるコーストライン沿いに思いを馳せ、実際に下見を兼ねてすでに一度訪れていた場所であった。

果たして、たどり着くその先にはどんな波が待ち受けているのか。

松岡が下見を兼ねてそのエリアを訪れた時は頭前後のうねりしかなかったため、各ポイントの本当の波の姿を見ることはできなかった。

が、もしそこに大きなスウェルが到達したらどんな波がブレイクするのか、松岡には検討がついていた。

「河口がある小さな湾があって、そこは多分インサイドのぐりぐりチューブになるはずで、あとは沖に浅い棚を見つけて、そこは今回のスウェルなら本当にすごいことになると思う」

「マジですか!超楽しみです!!」

出発前にそんなことを話しながら、松岡慧斗がサポートを受けるTOYOTA HILUXと村上舜の車2台で並走しながら、激しい雨が降りしきる中、夜通し高速を走らせた。

 

気がつくと知らぬ間に眠りについていたのか、まるで別世界の異次元空間にたどり着いたようで、目の前にはセット6ftオーバーの形のいい波が朝日に照らされ、サーファーを誘うかのように無人でブレイクしていた。

さっきまでの雨がまるで嘘であったかのような朝陽に包まれ、しばらくメンバーたちは波チェックしつつ、しかし、ここの海はサイズもあって形もいいけど、追い求めるチューブ波ではないということで、さらにこの異次元の奥地へ進むことに。

北へ南へ。

東へ西へ。

とうとうGoogle Mapはバグりはじめたのか、まるでどちらの方向が北で南で東で西なのかわからない状態のまま、道沿いに海が見えては車を停めてチェックし、また走っては海をチェックしを繰り返していく。

 

沖にアウターリーフを備え、インサイドはビーチというとある場所ではダンパー波を横目に、岬の先に出てみてはその沖にある棚でどういう波がブレイクしているのかをチェックし、そうこうしているうちにいつの間にか時は経ち、正午を迎える頃には、またしても雲行きが怪しくなりはじめ、幻だったのか、トンネルの出口で虹を見ると、今度は午前中の晴天とは打って変わって激しい雨と風に見舞われた。

 

これでは可能性の低い海をチェックするのは気持ち的に困難を極める状況となったため、とりあえず松岡が目星をつけていた海だけを数カ所チェックして行くが、しかし、波は惜しい感じでスペシャルではなく、或いは一般サーファーとして考えれば形の良い綺麗な波でもチューブがなかったりと、ただただ時間だけが過ぎていった。

「この岬の先にある浅棚は、今日くらいの波高があればすごいチューブになると思うんだよね」

そんな松岡の言葉に心弾ませ、その波をチェックするべく道を探るが、しかし、最初に到達した海にアクセスする道は通行止めとなっていた。

それでも諦めきれないクルーたちは、地図を頼りにもう一本の海にアクセスできる道を見つけ出し、一度山道を登ってぐるっと回り込み、小さな川に沿った車一台がやっと通れるような細道を目的地に向かって下って行く。

いよいよその波の姿をチェックできるぞ!と思ったその次の瞬間。

目に飛び込んできたのは、土砂崩れによって崩れ去り、それ以上は通れなくなった細道であった。

 

「うわ〜、最悪だ、、」

Uターンできるほどの道幅がなかったため、今来た道をフルバックで登って戻る羽目に。

しかし、斜度が急なセクションに到達すると、道路に散乱する落ち葉や土砂でスリップしやすくなっていた路面にタイヤが空回り気味になってしまう場面もあり、しかも通行止のサインがこの道の入り口になかったことから、この土砂崩れはかなりフレッシュであることは容易に想像でき、そんな自分たちが置かれている状況に無言の緊迫した空気に包まれる。

やっとの思いでわずかに広くなったカーブのスペースを活かして何度も何度も切り返してUターンをメイク。

何とか次なる目的地へ。

数十分ほど走ると、今度は山に囲まれるようにして広がる小さな湾に到着。

が、雨が激し過ぎて車から出たくない。

そんなことも言ってられないので車から降りてわずかに雨宿りできる場所から波を見ると、そこには河口があり、アウトサイドでは6ftオーバーのジャンクでヘヴーな波がブレイクしており、そしてインサイドでは河口の流れを受けて時折ドカンのようなチューブ波がレフト方向にブレイクしており、数十本に一本はスピッツを吹いている。

 

走り続けたその先で遭遇したこの波に、一同テンション上がりまくりとなるが、しかし冷静になって見れば見るほどその波はチューブこそあれど決して良いとは言えない感じで、しかも風も若干サイド気味で、さらには雨が激し過ぎることから撮影もままならず、いざ今すぐGoする気持ちにはなれなかった。

ウェイブハンター松岡慧斗が予報をチェックすると、夕方には雨も風もおさまる予想となっていたことから、取り急ぎ少し遅くなってしまったが、昼食をとってからもう一度チェックしてみようということになった。

地元で採れた魚を素材とする定食屋で昼食をすませると、しかし雨も風も全く止む気配はなく、16:00くらいまで先ほどの小さな湾に河口がある海の目の前に車を停めて雨と風が止むタイミングを待つことに。

しかし、夜通し徹夜で走り続けてきたことに加えて、満腹がさらに眠気を誘い、気がつくと全員が車の中で仮眠状態に。

「いやぁ〜、ダメだね」

最初に目を覚ました誰かが言った。

その声に目を覚めして海を見てみると、先ほどとさほど変わらない雨と風と波がそこにあり、時間も日没近かったことから、この日は収穫ゼロと諦めて、明るいうちに宿を目指すことに。

薄暗くなって行く空の下、途中で数カ所道から見える海を眺めながら、車を走らせる。

一時間ほど走った頃だっただろうか。

海沿いの小さな漁村を通過しようとした時だった。

何と、その海の沖に、6ftオーバーはあろうか巨大なチューブ波が勢いよくスピッツを吹いたのである。

「おおっ!!ヤバイヤバイ!!!」

一気にテンションMAXになったメンバーたちは、車を徐行させてゆっくりとその波をチェックする。

 

オフショアで綺麗にシェイプされたその波は、幻の一本ではなかったようで、どうやら沖にパーフェクトな棚があるらしく、セットが入ると底掘れしたロングチューブを形成し、しかもその数本のセット全てが可能性を感じるには十分なポテンシャルを解き放っていた。

一ヶ月前に松岡がこのエリアを下見した時は、ここの海は波すらブレイクしていなかったようで、いま目の前でブレイクする意外なその波にあんぐりと口を開けたままクギ付け状態となった。

しかし、時すでに遅しで、陽はすでに沈んでおり、とりあえずは翌朝に可能性を賭けるべく、隣の隣くらいにある小さな湾の目の前にある民宿にチェックイン。

「星がやばい!超綺麗!!」

誰かの言葉につられて一同は空を見上げた。

関東では決してみることはできないような美しい星空が広がっていた。

それに見とれながら、それぞれが収穫ゼロに見えて確かな感触を得た今日という1日を振り返っていた時、不思議なことに星空を真っ二つに切り裂くような流れ星を見た。

 

 

 

 

yoge
サーフィン・プレビュー/吉田憲右著・泉書房、古都鎌倉ミステリー旅/吉田憲右著・コスミック出版など数々の書籍を発行し、2000年にTRANSWORLD SURFの外部スタッフとなったのをきっかけにメディア界に参入。 2001年から2009年10月まで月刊SURFING WORLDの編集部兼カメラマンとして勤務。 その経験と共に、第1回NSA東日本サーフィン選手権大会Jrクラス3位、2年連続THE SURFSKATERS総合チャンプなどテストライダーとして培ってきた経歴を活かし、サーフィンを軸としたスケートボード、スノーボード、ミュージック、アート全般をひとつのコーストカルチャーとしてとらえ、心の赴くままにシャッターを押し、発信し続ける。 >>>出版物 >>>プライベート撮影問い合わせ