Photos & Text by Takayuki“ManiaOchi”.

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日本もそろそろ本格的な冬の到来をむかえ、

各地では初雪の便りも届きはじめた11月の後半。

太平洋では季節外れの台風26号が北上するなか、

同時に西高東低の冬型に覆われるという類稀な気圧配置となり

日本海の某ブレイクではクローズに近いエピックコンディションとなった。

まさに日本のノースショアと呼ぶにふさわしい強烈な波が姿を現した。

そんな中、この天気図見てまたとないこのビッグチャンスを逃すまいと、

エピックなコンディションを求めてたった一人でやってきた男がいた。

その男こそ、日本を代表するビッグウェイバーのひとりであり、

現在は大阪でGolden Surfを営むプロサーファー金田輝士にほかならなかった。

 

 

とはいえ、日本海のベストコンディションを当てるのは本当に難しく、

この日も朝から冷たい雨が降りしきる悪天候となり、

さらにはウネリの向きもパーフェクトとは言えないハードなものとなったなか、

ハワイアンサイズにして8ftから6ft近い強烈なスウェルが

膝から腰程度の水深からなる浅い岩棚に一気にヒットして

恐ろしくも美しい、鬼のように底掘れする波が姿を現した。

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時折、カタチのいいセットは入ってきていたが、

しかしながら、それを掴むのには

相当な集中力と経験が要されることは一目瞭然であり、

まるでひとを寄せ付けないコンディションと言って過言ではないなか、

タイミングよく天候も多少回復しはじめ、

数少ないベストなセットを上手くセレクトできれば

サーフ可能と判断した金田輝士は、

「行ってきます」

と、ただその一言だけを残し、

このブレイクに長年チャレンジし、見守り続けている

ローカルサーファーのロクさんこと今井さんに見守られながら、

たったひとりで誰もいないアウトサイドへパドルアウトしていった。

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レフトかライトか!?

ビハインドからどう攻めるのか!?

ワイメアをはじめ、世界各地のハードかつデンジャラスな

ビッグウェイブを数多くメイクしててきた金田輝士にして、

セットのセレクトがかなり難しい状況の中、

沖で波を待つこと10分以上。

張り詰めた空気に覆われるなか、

セットにタイミングを合わせ、パドリングを始めた。

テイクオフを難なくメイクし、レギュラー方向へとライドし、

予想以上に底ぼれしてくるこの波において

チューブのなかをトラベリングしたまではよかったが、

最後の最後でリップに潰され、

あと一歩で抜けられるというところでワイプアウト。

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しかし、それからアドレナリン全開となったのか、

命知らずの猛チャージを繰り返すが、

ランダムすぎる波の変化を読み切ることができず、

さすがの金田輝士も悪戦苦闘を強いられる。

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さすがの金田輝士もこのコンディションに太刀打ちすることができず、

なかばアウトオブ・コントロールとなったなか、

最後に1本小振りなレギュラーのチューブをメイクしたところで

一度海から上がり、1ラウンド目はこれにて終了。

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しかし、思い描いたライディングをメイクすることができず、

無念を残して海から上がってきた金田輝士の目の奥には、

確実に何かのスイッチが入ったかのように、

燃えたぎる何かが宿っていた。

誰もいないアウトサイドでは、

恐ろしいほどに美しいチューブを形成する大波が押し寄せ、

時折スピッツを吹き出しながらブレイクしては、

白波となって消えていく。

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サイズはほぼ変わらずキープしつつも、

徐々にうねりがまとまってきたこのタイミングを待ち続けていた金田輝士は、

再びウエットスーツに袖を通すと、

サーフボードに入念にワックスを塗り始めた。

「もう1ラウンド行ってきます」

またしてもただそれだけを言い残し、

金田輝士は誰もいないピークに向かって、

ゲッティングアウトしはじめたのだった。

 

つづく

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yoge
サーフィン・プレビュー/吉田憲右著・泉書房、古都鎌倉ミステリー旅/吉田憲右著・コスミック出版など数々の書籍を発行し、2000年にTRANSWORLD SURFの外部スタッフとなったのをきっかけにメディア界に参入。 2001年から2009年10月まで月刊SURFING WORLDの編集部兼カメラマンとして勤務。 その経験と共に、第1回NSA東日本サーフィン選手権大会Jrクラス3位、2年連続THE SURFSKATERS総合チャンプなどテストライダーとして培ってきた経歴を活かし、サーフィンを軸としたスケートボード、スノーボード、ミュージック、アート全般をひとつのコーストカルチャーとしてとらえ、心の赴くままにシャッターを押し、発信し続ける。 >>>出版物 >>>プライベート撮影問い合わせ