Interview&Text by Jun Takahashi Photo by Yasuma Miura Movie by Hajime Aoki

 日本随一の美しさを誇る、伊豆・下田のビーチサイドより、サーフィンの様々な楽しみ方を20年以上に渡って発信し続けている「リアルサーフ」。

オーナーである鈴木直人さんは、90年代を中心に活躍してきたプロサーファーだ。

 完結編のパート2。

直人さんが現役時代に力を入れてきたこと、また他にはないリアルサーフの魅力や活動についてお話を聞かせてくれた。

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パート1と鈴木直人さん、リアルサーフのプロフィールはこちらからチェック!

>>【#BILLABONGCORE】Vol.2 Part.1  REAL SURF リアルサーフ(伊豆・下田)

 

プロショップとして、リアルサーフが大切にすること

ビラボン(以下B):プロ生活を振り返って、一番印象深かったかったことは何ですか?

鈴木直人さん(以下N):やっぱりハワイはすごく特別ですよね。プロサーファーのひとつの仕事として取り組んで、1年中トレーニングをして。なかなかすぐには成果が出なかったんですけれど、何年も何年も……10年くらい通ったのかな。そうすることで波のこと、テクニック的なこと、当然マインドも含めてビッグウェイブに臨む姿勢を学んで、ハワイの波をメイクしてきました。

B:ハワイでのサーフィンはやっぱり別格なんですね。

N:ハワイでいい波を掴んで乗りこなすっていうのは、究極の人しかできないなと思います。だから、その時代にやっていたサーファーたちもそうだし、いま挑戦してる若いサーファーたちも、ハワイの波に乗ってメイクした人たちを僕は誰でも尊敬するし、応援したくなる。いつもそういう気持ちでいます。

1998年、ハワイ・サンセットビーチのインサイドボウルで巨大なバレルに包まれる直人さん。サーファーとしての一生に刻まれる一本をメイクするために、プロとして真剣に取り組んできた。そして結果は、こうして表れた。Photo: Naoya Kimoto.

Courtesy of Real Surf.

 

B:まさに究極の世界といえるプロ活動をされてきて、リアルサーフをオープンしたきっかけとタイミングは?

N:自分が30歳くらいのときに、先のことも考えなくてはいけない時期の中で、生まれ育った下田でサーフショップをやることが自分のひとつの目標になったんでね。今まで自分が経験してきたこと、サーフィンのテクニック的なこともそうだし、海や波のことを、たくさんの人に伝えたいなと思ったことがきっかけですね。

B:お店を構えて23年目。その間、サーフエリアとしての下田について思うことは?

N:連休になると、全国からサーファーが来るんですよ。大阪などの関西方面や、東北地方からも来ますし。サーファーにとっての憧れの場所なのかなという気がします。その魅力はもちろん波だし、綺麗な海、白い砂浜です。訪れるサーファーは昔に比べて、すごく増えていますよね。

B:魅力的ですものね。

N:でも平日はガラガラなんで、そういうときに自分は集中的にサーフィンをして、週末はあまりやらずにみんなに楽しんでもらえるようにオープンな気持ちでいます。「楽しんでいって!」って。でも波の大きいときは、もちろん週末でも海に行って、パパッといい波乗って、それからお店に来て仕事をする。そういうライフスタイルが自分の中で完全に出来上がっています。

サーファーだけでなく世界中からたくさんの人が訪れる伊豆・下田。なかにはあまりに綺麗な海を見て、初めてサーフィンを体験したくなる人も。リアルサーフはそんな人たちの頼りにもなる、誰にでも優しいショップだ。

 

B:プロ時代はチャージの部分が大きかったと思うのですが、お店を見ていると、より幅広いサーフィンの楽しみを伝えているように感じます。リアルサーフが大事にしていることは何でしょうか?

N:初心者の方とか、サーフィンを一生懸命頑張っている人たちを応援したいという気持ちです。僕が子供の頃からサーフィンをやってきて、コンテストも経験して、旅も経験して、ビッグウェイブも自分の究極までいって思ったことは、サーフィンを上手くなるっていうのはすごく大変だということ。波に乗って思い通りにラインを描くには10年くらいは掛かりますよね。その大変さを知っているから、初心者の方には自分が目線を同じに合わせて、優しく、わかりやすく説明して、みんなで楽しくサーフィンすることが重要だと思っています。

B:取り扱っているサーフボードも幅広いですよね。直人さんもシェイプされているとか?

N:はい。自分のシェイプに関してはカスタムだけです。お客さんのライディングを見て、「こんな形がいいんじゃないの?」と相談したり、浮力や幅などを僕が調整してあげながらカスタムしています。あとうちでは、マーク・リチャーズやアーモンドサーフボードを取り扱ってます。僕にとって流行りとか、スタイルとかとは全然関係なくて。すべてのモデルを全部自分が試乗して、確認して、「これいいな!」と思ったものだけを取り扱っていることが自分のショップにおいてあるボードの特徴かな。だから自分のボードばっかり増えちゃって(笑)。

B:いつ頃からいろんなボードに乗るようになったんですか?

N:ハワイにいたときに、みんながガレージから昔のボードを取り出して楽しんでいる姿を見てから。昔のデザインが見直されて、そういうスタイルの楽しみ方が始まるんじゃないかなと思ったんです。その流れの中で、カリフォルニアでもレトロツインなどに乗るようになっていった時代があって、いち早く自分もカリフォルニアのシェイパーに作ってもらい、乗るようになりました。僕はコンテストの厳しさを知っているので、お客さんにはコンテストを無理に勧めません。反対に、楽しめるボードをみんなに乗ってもらった方がいいなと思って。そうして自分でも作りながら、みんなに楽しいサーフボードを乗ってもらうというスタイルを下田で築いてきました。

よりダイレクトにサーフィンの楽しみを伝えるために、自らサーフボードも作る。シェイピングの師匠は、Vol.1に登場したソエダサーフボードジャパンの松本光二氏。こうして歴史と伝統は脈々と受け継がれていく。

 

B:お店にはボードだけではなく、ビラボンなどの洋服のセレクトも光ってますよね。

N:昔から洋服は好きで。とくにビラボンはライダーで着ていたんでね。ポリシーとかスタイルが好きなんで、ずっと取り扱っています。サーファーの感性が感じられるデザイン性が魅力です。それはカラーの組み合わせであったり機能性であったり。だからこそコアな男性サーファー、女性サーファーから支持されているのだと感じています。

B:ビラボンのアイテムは、具体的にはどんなアイテムが人気ですか?

N:ウィメンズのウェットスーツコレクション「サーフカプセル」は毎年人気があります。メンズはカリフォルニアのレトロな雰囲気漂う「ギャラリーコレクション」の人気が高いです。昨年のアンディー・ウォーホールコレクションは、カルフォルニアの自由な発想が伝わるデザインが素晴らしかった!そして今年のバスキアコレクションは、感性の高いお客さんに反応が良かったです。

B:サーファーじゃないお客さんも訪れそうな雰囲気です。

N:そう、お店にはサーファーじゃない方たちも来てくれます。いい感じに海の香りがするんじゃないかな。ビラボンの服はコアなサーファーだけでなく、サーフィンしない人にも手に取ってもらいやすいです。

独自の目線でセレクトされた良質なアイテムが揃い、サーファーのみならず多くの人たちが立ち寄るため交流が生まれる。カルチャーを育むリアルサーフには、人気のあるビラボンの最新ウェアがもちろんラインナップ。

 

B:オリジナルアイテムもいいですよね!

N:いろんなサーフアーティストが好きで、アンディー・デービスに始まり、ケビン・バトラーやヨナス・クレアッソンにも描いてもらったりしてね。ヨナスは前から気にはなっていたんだけど、インスタで見たら「絶対いい!」と思っちゃって!それでお願いして作ってもらいました。その辺は自分の遊び心ですね。

マニア垂涎のサーフアーティストによるオリジナルアイテムたち。最新作はサーフボードを乗せた車の絵で有名なケビン・バトラーのイラスト。直人さんが着ているTシャツはヨナス・クレアッソンの作品だ。

 

B:リアルサーフが力を入れている活動は?

N:毎月1回行っている、入田浜のビーチクリーン活動。そして20年以上に渡って、キッズサーフィンスクールを毎年ローカルの仲間と開催していることです。地域社会に長年貢献する取り込みを積極的に行なっていることで、お店を23年間続けられていると思っています。

B:今後、プロサーファーとして、プロショップとして目指すのはどんなかたちですか?

N:このままお店をやって、スクールをやって、たくさんの人にサーフィンの喜びを伝えていければいいです。もちろん大切なのは、自分がサーフィンすること!(笑)。これが自分の中にありきなんで。若いサーファーを育てて、みんな仕事をしつつもサーフィンを楽しむ。自然を大切にする。それが一番重要ですね。そうして次の世代にバトンタッチできれば、自分は嬉しいです。

毎年、下田で開催されているビーチイベント「ビッグシャワー」にて、キッズサーフィンスクールを行っている直人さん。サーファーだけでなく、たくさんの人が集う場所でやるからこそ、サーフィンの裾野は広がっていく。Photo: Takahiro Tsuchiya.

 

リアルサーフはいつでも和やかなムード。店長である松山圭さん(左)と一緒に、今日も美しい下田の海でサーフィンの楽しみを伝えている。

<おわり>

 

<ショップインフォメーション> INFORMATION

REAL SURF リアルサーフ

オーナーである鈴木直人さんシェイプのオリジナル「ナライサーフボード」始め、「アーモンド」、「ウェグナー」など、魅力的なサーフボードが勢揃いする。また、ビラボンの最新ウェアが常時ラインナップし、下田エリアのセレクトショップとして、サーファーのみならず、多くの人が訪れるほど高感度なアイテムも豊富だ。アンディー・デイビスやヨナス・クレアッソン、ケビン・バトラーなど著名なサーフアーティストが手掛けた、リアルサーフのオリジナルグッズはここでしか入手できないので、ぜひお店を訪れて手に取ってみてほしい。ホームポイントである入田浜までは車で数分という好立地で、ISA公認指導者による丁寧なサーフィンスクール、ボードロッカーやレンタルなど気軽にサーフィンを楽しむためのサービスも充実している。

ADDRESS: 〒415-0028 静岡県下田市吉佐美1612-1

 

TEL: 0558-27-0771

WEB: https://realsurf.jp

<ビラボンコアとは?> What is「#BILLABONGCORE」?

ビラボンは、1973年に創始者であるゴードン・マーチャントがつくり出した良質なボードショーツが、ローカルサーフショップから全世界へ広まっていったのが始まりです。グローバルブランドへと成長を遂げた今も、「Only a surfer knows the feeling(サーファーだけが知るあの感覚)」というフレーズとともに、サーフィンを愛するシンプルなスピリットをもっとも大切にしていることは変わりません。流行の移り変わりが早いこの時代だからこそ、サーフカルチャーを育み続けている、海辺のボードメーカーやサーフショップの背景にある“歴史”という揺るぎない価値、核(コア)を見つめ直し、改めてその魅力を伝えるべく生まれたコンテンツが「#BILLABONGCORE」です。サーファーたちのユニークな伝統を紡いでいくことは、世界のサーフシーンを長きに渡り支えているビラボンの役割であると考えています。

 

 

 

 

 

 

 

 

yoge
サーフィン・プレビュー/吉田憲右著・泉書房、古都鎌倉ミステリー旅/吉田憲右著・コスミック出版など数々の書籍を発行し、2000年にTRANSWORLD SURFの外部スタッフとなったのをきっかけにメディア界に参入。 2001年から2009年10月まで月刊SURFING WORLDの編集部兼カメラマンとして勤務。 その経験と共に、第1回NSA東日本サーフィン選手権大会Jrクラス3位、2年連続THE SURFSKATERS総合チャンプなどテストライダーとして培ってきた経歴を活かし、サーフィンを軸としたスケートボード、スノーボード、ミュージック、アート全般をひとつのコーストカルチャーとしてとらえ、心の赴くままにシャッターを押し、発信し続ける。 >>>出版物 >>>プライベート撮影問い合わせ